自然を相手にする趣味であるアマチュア無線

 アマチュア無線は刺激的かつダイナミックな趣味だ。なぜなら、アマチュア無線は自然を相手にするものだからだ。短波帯では、季節によって電波が届く範囲が大きく変わる。太陽高度が高い夏季には、上空の電離層の密度が増すため、電離層と地上の間の反射によって10MHz以上の短波帯の電波の届く距離が著しく伸びる。この時期は個人の無線設備でも、日本から北米・南米・ヨーロッパとの遠距離交信が可能になる。短波だけではない。夏季にはEスポという特殊な現象により、本来は見通し距離のみの通信しかできない50MHzや144MHzといったVHF帯の電波でも県をまたいだ通信や隣国との交信が可能になる場合がある。反対に冬季は電離層が薄くなるため、10MHz以上の短波帯、VHFでの遠距離通信・異常伝播は全く期待できなくなる。この時期、無線機のスイッチを入れると設備の故障を疑いたくなるくらい、交信相手がいなくなる。季節によるものだけではない。1日の間でも、状況は大きく変わる。朝・昼・夜で大きく交信相手が変わる。日中は交信相手が日本国内に限られる。だが、夜になると上空70Kmから400kmにある電離層の状態が変わり、中国・韓国などの隣国や、果てはヨーロッパなどの遠い地域にまで交信相手が広がる。特に夜明け・日没時に発生するグレーラインパスと呼ばれる自然現象をつかい、日本からカリブ海諸島への交信ができることはよく知られている。太陽と地球、季節の移り変わりによる変化を直接感じられるアマチュア無線は本当に知的好奇心をくすぐる遊びだ。